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きんようびの かだいから にげるように

有/川浩『レ/インツ/リーの国』を読みました。
感想を続きに。
ネタバレ注意、かな。

ついったにも書きましたが、人間分かり合いきれないことはどうしてもあるもんです。
「君のすべてを分かりたいんだ」は結局夢のままなのです。
だからってその気持ちは失くなっていいものでは決してない。
いつかそこに、分かりきれないことも共有することができた素敵な関係が生まれると思うのです。
そうしてきっと人間は愛し合うのです。

主人公カップルはまだ「恋」をしているだけ。
「君のセンスが好き」「ここまで向き合ってくれるのはあなたしかいない」
主人公の会社の女性が登場したりするものの、二人の気持ちは二人の中で情熱的に(盲目的に)積み重なっていっているだけだと思うんです。小説の段階では。
私は「愛」というのはそういうものでなくて、ただその人が隣にいることが自分にとって必要になるということなのだと思うのです。
「好きだから傷つけてやりたい」「どうして分かってくれないの、こんなに好きなのに」
「恋」にはこんな乱暴な気持ちも付き物。それでこそ「恋」だし、それこそが「恋」の持つ他には無い感情です。
「恋」は「愛」のスタート地点だと思うから、いつかこの二人も「愛」を抱き合える関係になれたらよいと思います。

自分が汚く見えちゃうことも、この人なら嫌いにならずに聞いてくれると思えて、
しかもそれをいちいち自分の中で美化(「この人だけが分かってくれるの」みたいに)したりせずに、
無意識に信頼して話して、それはもう素敵な当たり前としてそこに自然と存在する。
そんなのが「愛」じゃないかな?と思ったりします。
そう考えてみると、私の考える「愛」には、「信じる」が必要みたいですね。
「こんなこと言ったら嫌われる?」
「こんなに離れていたら私のこと忘れちゃうんじゃ?」
「私のみていないところであなたは何をしてる?」
相手の気持ちが信じられない。自分の思いが熱くて激しいぶん、よりいっそう。
「恋」ってそんな感じかな。やっぱりどこか独りよがりというか。

「愛」の段階に入れば、そこに「恋」が失くなるのかと言えばそうとも言い切れないと思います。
でも限りなく薄れるのかも?いわゆる「ときめき」を他に求めるようになったりするかも。
でも「愛」は大きいはずです。そんな簡単に生まれない。だからその人は特別なまま。

ところで本の感想を述べると(ここまでただ自論を展開しただけになってましたね)メールという言葉のやりとりの表現がすごく自分の中に染み入りました。
私はメールで言葉を捻るのが好きです。自分のメールで相手が感動してくれると本当に嬉しいです。
この小説ではそんな言葉の深いやりとりがとても丁寧に描かれていて、あーいいなこういうの、フォントでこんなに真剣に向き合ってくれる相手がいるなんて、すごく素敵だなと思いました。
言葉っていいですよね。言葉が嫌いな人、難しい言葉を知らない人でも、その人なりの言葉の使い方があって、そういう違いが私は好きです。
伸行はひとみの言葉の使い方、表現のしかたも好きだったみたいですよね。そういうのって、気にしない人は本当に気にしない部分だと思いますが。
また自論になってますね。とりあえずそういうメールの描写がとても良いと思いました。

あと、ひとみの卑屈さがすごい自分とリンクして引き込まれました。
結局ひとみは、ただのコンプレックスの多い地味目でネガティブまっしぐらの根暗な女の子(言い方ひどいですが)でしたよね。
一方で、先に好きだと言ってくれた伸行に甘えて、驕り高ぶってる。
おたく女で自過剰の私としては、すごく感情移入してしまうキャラクターでした。
だからこそ伸行のまっすぐな気持ちがすごく眩しかったです。これはもうどんどん好きになっちゃうよね、と思いながら読んでました。
ひとみが伸行と出会ったことはとても運命的だと思います。若干少女漫画的です。それがこの作品を、私みたいなあんまり読書しない人間にも軽く読むことができるものにしてくれているのかなと。
扱っているテーマの重みを考えても、こんなにすらっと読めたのは作者の腕だよなぁとか素人なりに思いました。
何かきらきらしたものが残っている感じ。『レインツリーの国』の存在、伸行とひとみの恋心なんかが、作品のいたるところで読者に幸せなどきどきを与えてくれているのかなと。
それでいて分かり合おうともがく二人をちゃんと描けたのはすごいです。二人のやりとりをメールにして、文字という作者の得意分野に引き込んで丁寧に、豊かに描けたのが良かったんですかね。

久しぶりに読書したのでいっぱい語ってしまいました。
これを機に、有川さんの他の本も読んでみたいです。
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